高血圧症とは
血圧が一定の基準値を超えて慢性的に高い状態が続くと、高血圧症と診断されます。
血圧が慢性的に高い状態が続いても、明確な自覚症状が出にくいのが特徴です。一部の人々では、血圧が急激に上昇すると、めまいや肩こり、頭痛などの症状が現れることがありますが、これらが高血圧の症状であると気づくのは難しいため、見過ごされがちです。自覚症状がなくても、血圧が高い状態は動脈硬化を進行させます。その結果、眼底出血、腎臓病(腎不全など)、脳血管障害(脳梗塞など)、心筋梗塞などの深刻な合併症を引き起こすリスクが高まります。
高血圧の原因については、大半が特定できない本態性高血圧です。このタイプは、高血圧になりやすい体質の人が不健康な生活習慣や環境要因(過剰な塩分摂取、過食、運動不足、喫煙、飲酒、ストレスなど)によって発症すると考えられています。もう一つの原因は二次性高血圧で、これは特定の疾患(腎疾患や内分泌疾患など)や薬物の影響により血圧が上昇するものです。つまり、原因が明確なタイプです。このような場合、原因となる疾患の治療により血圧が下がることがあります。
治療について
高血圧の治療目標は、血圧を管理し、合併症の発生を予防することです。そのために最初に行うべきは、生活習慣の改善です。
食事に関しては、塩分の摂取を抑えることが重要です。具体的には、1日の塩分摂取量を6g以下に抑えることを目指します。日本人の平均的な塩分摂取量は1日10g程度と言われているので、かなり厳しい目標ですが、栄養指導を当院で受けて頂き、宅配食や味付けの工夫などしていきましょう。さらに、尿として体内の塩分を排出するために、カリウムを豊富に含む野菜(ほうれん草や春菊など)を摂取すること、そして禁煙や節酒も行います。
また、肥満の方は心臓への負荷を増やさないように体重を減らすことが求められます。その際、運動を取り入れることが最良で、これにより血圧を下げる効果も期待できます。ただし、激しい運動は血圧を上げる可能性があるため、全身の筋肉を使う有酸素運動で、1分間の脈拍が100~120程度になるような運動(例えばウォーキングなど)を、30分程度行い、週に5日程度行うことで効果が見られます。
生活習慣の改善だけでは血圧が十分に下がらない場合は、薬物療法も併用します。主に使用されるのは降圧剤で、患者様の血圧の状態によっては、複数の種類を組み合わせて使用することもあります。治療薬として選ばれるものには、ARB、ACE阻害薬、ARNI、利尿薬、カルシウム拮抗薬、β遮断薬などがあります。
降圧の目標は年齢や基礎疾患で異なっており、安易に通年同様の用量を内服していると血圧低下してしまい、腎機能が低下していることがあります。季節に応じた、また多剤併用とのバランス、年齢に応じた降圧目標を意識した内服調整が必要です。